個人事業主として事業が拡大してくると、業務の一部を任せられる従業員を雇いたいと考える方も多いでしょう。
しかし、従業員を雇うには労働法に関する基本的な知識と、いくつかの重要な手続きが必要です。これらを正しく理解していないと、法律違反やトラブルに発展するリスクがあります。
この記事では、個人事業主が初めて従業員を雇う際に押さえておきたい労働法のポイントと必要な手続きを、わかりやすく解説します。
雇用契約と労働条件通知書

従業員を雇用する際は、口頭だけでなく書面で契約内容を交わすことが法律で義務付けられています。
特に「労働条件通知書」と呼ばれる書面には、労働時間、給与、休日、就業場所、業務内容、契約期間などを明記する必要があります。
この通知書は、雇用形態にかかわらず全ての労働者に対して交付が必要です。
契約書形式にして、署名・押印をもらうことで証拠力を高めるのが一般的です。

「労働条件通知書は、会社と従業員の信頼関係の土台です。必ず作成・交付しましょう。」




「そっか!バイトでもちゃんと書面でもらったな〜、それと同じなんだね!」
労働時間と休憩・休日のルール
労働基準法では、1日8時間、週40時間以内が原則とされています。これを超える場合は、いわゆる「36(サブロク)協定」を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。
また、6時間を超える労働には45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩時間を与えることも義務付けられています。休日は原則として週に1日以上を確保する必要があります。




「忙しいからって休憩ナシで働かせるのはダメってこと?」










「はい、明確に違法になります。時間管理はとても大切ですよ。」
賃金の支払いと最低賃金の遵守
従業員に支払う賃金についても、法律で細かくルールが定められています。
賃金は毎月1回以上、一定の期日を定めて現金または振込で支払う必要があります。
また、労働者に支払う賃金は地域ごとに定められた最低賃金を下回ってはなりません。
例えば、東京都の最低賃金(令和6年現在)は時給1,113円です。これ以下の時給で雇用することはできません。










「支払いの遅れや未払いも、後々大きな問題になりますよ。」



「ちゃんと毎月、忘れずに払わないとだね!」
社会保険・労働保険の加入義務
個人事業主が従業員を雇う場合、労働保険(労災保険・雇用保険)や社会保険(健康保険・厚生年金)の加入義務が発生することがあります。特に、週30時間以上勤務する従業員には社会保険の加入が必要です。
加入手続きはハローワーク(雇用保険)や年金事務所(健康保険・厚生年金)、労働基準監督署(労災保険)などで行います。


「手続きって結構ややこしそう…」










「そうですね。わからない場合は、社会保険労務士に相談するのが確実です。」
雇用前に必要な届出と申請書類
従業員を雇用するには、まず税務署への「給与支払事務所等の開設届出書」の提出が必要です。また、源泉所得税を納めるために「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」も提出しておくと、税務処理が簡便になります。
このほか、労災保険・雇用保険の加入のための「労働保険関係成立届」「雇用保険適用事業所設置届」なども必要になります。これらの届出は、雇用開始から概ね10日以内に行うのが基本です。










「届出は事業主の義務です。雇用が決まったらすぐに準備を始めましょう。」


「けっこういろんな書類があるんだね。チェックリスト作ったほうがいいかも!」
青色申告と専従者給与の違い
個人事業主が家族を従業員として雇う場合、「青色事業専従者給与」の制度を利用することができます。これは、生計を一にする配偶者や親族に支払った給与を必要経費として計上できる制度です。
ただし、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出する必要があります。また、勤務実態や支払額が妥当でなければ、経費として認められない可能性もあるため、注意が必要です。




「親とか配偶者にも給料払えるってこと?」










「はい、条件を満たせば経費にできます。節税の観点からも有効です。」
労働法違反のリスクと事例
労働法を守らずに従業員を雇用した場合、以下のようなリスクがあります。
- 労働基準監督署による是正勧告や指導
- 未払い賃金の請求や損害賠償請求
- 刑事罰や罰金の対象になるケース
過去には、未払い残業代を請求されて数百万円の支払いが命じられた例や、違法解雇により訴訟になったケースもあります。










「知らなかったでは済まされません。法令遵守は事業主の基本です。」


「ちょっと怖いけど、ちゃんとルールを守れば大丈夫なんだよね!」
就業規則の整備とその重要性
従業員が10人以上になると、就業規則の作成と労働基準監督署への届け出が義務となります。ただし、10人未満でもトラブル予防のために作成することが推奨されます。
就業規則には、勤務時間、休日、給与、懲戒処分の基準などを明文化します。これにより、従業員との間でルールを共有でき、トラブルを未然に防げます。



「ルールがあると安心できるかも!」










「お互いのためにルールを明確にしておくことが大切ですね。」
労使トラブルを防ぐための信頼構築


どれだけ法的に正しく対応していても、人間関係がうまくいかないとトラブルは起きやすくなります。
日頃からのコミュニケーション、悩み相談の機会づくり、透明性のある運営などが、従業員との信頼関係構築には欠かせません。
信頼関係がある職場は、離職率も低く、働きやすさにもつながります。










「法律と同じくらい、人間関係も大事です。誠実な対応を心がけましょう。」


「ちゃんと話を聞いてもらえるって、それだけで働きやすい職場になるよね!」
まとめ
個人事業主が従業員を雇うには、労働法に基づく契約・就業管理・保険手続きなど多くのステップがあります。
これらを一つひとつ丁寧に行うことで、トラブルを防ぎ、信頼される事業主になることができます。
法律を守りながら、働きやすい環境を整えることが、事業の成長にもつながります。
初めての雇用で不安な点がある場合は、自分で全てやろうとせずに、専門家の力を借りるのも一つの方法です。
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