個人事業主としてビジネスをしていると、毎年やってくる「確定申告」はとても大切な手続きです。とはいえ、「難しそう」「どうやって準備すればいいの?」と不安に思う方も多いでしょう。特に、はじめて開業したばかりの方や、普段から簿記や会計にあまり触れていない方にとっては、確定申告はなかなかハードルが高く感じられるかもしれません。
そこで本記事では、高校生でも理解できるようにかみ砕いて、個人事業主の確定申告についてわかりやすく解説していきます。確定申告が何のために必要なのか、どのような流れで行うべきかといった基本から、スムーズに進めるための準備や節税につながるポイントまで、幅広く取り上げます。成功のためのポイントや注意点をおさえて、今年だけでなく、今後もスムーズに申告を乗り切りましょう。
1.確定申告とは?
1-1.そもそも「確定申告」って何?
確定申告とは、1年間(1月1日~12月31日)の収入や経費などをまとめて税務署に報告し、納める税金を計算する手続きのことです。会社勤め(サラリーマンやアルバイトなど)の人は、基本的に会社が年末調整を代行してくれるため、個別に確定申告を行う機会は少ないかもしれません。しかし、個人事業主は自分自身で収入や経費を整理し、正しい所得額と納税額を税務署に申告する義務があります。
このように、個人事業主の方にとっては確定申告が欠かせない大切なイベントです。もし事業として利益が出ているのに申告をしないままでいると、無申告加算税や延滞税などのペナルティが発生するリスクもあり、大きなトラブルに発展する可能性があります。正しく、期限内に申告と納税を済ませることで、安心してビジネスを続けられるのです。
1-2.個人事業主が申告しないといけない理由
個人事業主の場合、事業の利益は個人の所得とみなされます。これは、いわば「事業と個人が一体」と考えられているからです。つまり、事業として得た収益は、個人としての収入扱いとなり、それに対して所得税や住民税などをきちんと納付する必要があります。正しく申告し税金を納めるという行為は、公共サービスを支えるためにも重要です。
さらに、きちんと申告を行うことで税務署からの信頼を得ることができます。将来的に事業を大きくしたい、あるいは融資を受けたいと考えている場合、過去の確定申告書や決算書は金融機関や行政機関に提出する重要な資料となります。安定した申告実績や正確な経理処理は、融資審査でもプラスに働くことがあるので、日頃から適切に行う習慣を身につけておくことが大切です。
2.確定申告が重要な理由
2-1.正しい経理が事業の「健康診断」に
確定申告のためにまとめる収入や支出のデータは、事業の「健康状態」をチェックするための重要な指標になります。ビジネスを継続的に成長させていくためには、売上がどれくらい上がっているのか、経費がどのくらいかかっているのかを常に把握しておく必要があります。
たとえば、ある月は売上が良かったけれど、その分大きな経費も同時にかかっているかもしれません。そういったデータを日常的に管理していれば、「この費用は本当に必要だったのか?」「もっとコストを抑える方法はなかったのか?」と振り返るきっかけになります。定期的な経理は、いわば自分のビジネスを「健康診断」するようなものであり、売上アップやコスト削減のヒントを見つけるのにも役立ちます。
2-2.節税効果が期待できる
確定申告で最も大きなメリットの一つが「節税」です。経費として正しく計上できる支出や、さまざまな控除を上手に活用することによって、支払う税金を少なく抑えられる可能性があります。
たとえば、事務所の家賃や電気代、通信費、広告宣伝費などは事業に関連する経費として計上できます。必要経費として扱えるものをきちんと整理・記録しておくと、課税対象となる所得が小さくなるため、その分だけ納める税金を減らすことができるのです。また、青色申告者が受けられる特別控除や、医療費控除・社会保険料控除などの制度を駆使することで、より大きな節税が狙えます。
2-3.融資や助成金の申請にも役立つ
銀行からの融資や、行政機関の助成金を申請する際には、確定申告書や決算書などの提出が求められる場合が多くあります。確定申告書は、事業の収支状況や収益性を客観的に示す資料なので、融資担当者や審査担当者にとっては非常に重要な判断材料です。しっかりとした書類を用意できるほど、「この事業主は経理処理もきちんとしていて信用に値する」と評価される傾向にあります。
助成金を受ける場合も同様で、きちんと利益や費用を把握しているかどうかが大きなポイントになります。したがって、普段から経理処理を疎かにせず、必要書類を整えたうえで確定申告を行うことが、事業拡大のチャンスを広げることにもつながるのです。
3.確定申告を始める前に知っておきたいこと
3-1.申告期間
日本では、前年の1月1日から12月31日までの分を、翌年2月16日から3月15日までの間に申告・納付するのが基本となっています。たとえば2024年の確定申告であれば、2023年の1月1日から12月31日までに発生した収入・経費を、2024年2月16日から3月15日までに申告し、納付を完了する形です。
期限を守らないと、延滞税や加算税などのペナルティがかかることもあり、余計な出費につながります。特に、事業を始めたばかりの方は初めてのことが多く、書類作成に時間がかかりがちです。余裕を持って準備を進め、期限内に申告を終えることを意識しましょう。
3-2.青色申告と白色申告の違い
個人事業主の申告には、「青色申告」と「白色申告」の2種類があり、どちらを選ぶかで受けられるメリットが変わってきます。
- 青色申告:帳簿をきちんと作成・保存することが求められますが、最大65万円の特別控除(※要件による)など、税金を安くできるメリットがあります。さらに、赤字が出た場合には翌年以降に繰り越すことができるなど、節税効果が高い点も魅力です。
- 白色申告:帳簿作成の要件がゆるやかであり、書類も比較的シンプルなので、手間が少なく初心者にも始めやすい方法です。ただし、青色申告ほどの節税メリットはなく、せっかく事業を始めるのであれば、青色申告を検討する方が将来的には得になる可能性が高いでしょう。
事業を長く続ける、あるいは成長させたいと考えている方には、青色申告を強くおすすめします。帳簿の作成に多少の手間はかかりますが、その分の節税効果や信用力アップにつながります。
4.確定申告をスムーズに進めるための準備
4-1.日々の収入と支出の記録
確定申告でいちばん大事なことは、日々の売上や経費を漏れなく記録することです。これを怠ると、いざ申告書を作成するときに「あれ、この支出はいつの分だった?」「領収書が見つからない」という状態になり、思わぬミスや申告漏れが起きてしまいます。
最近では、クラウド会計ソフトやスマホアプリなど、さまざまな便利ツールが登場しています。銀行口座やクレジットカードと連携し、自動で取引データを仕訳に反映してくれるものもありますので、「経理作業が苦手」「どうしても数字が嫌い」という方でも、以前と比べてかなり手軽に取り組めるようになっています。できる限りこまめにデータを入力・チェックしておくことで、確定申告の時期になっても大慌てせずに済むでしょう。
4-2.領収書・レシートの保管
経費を証明するために必要な領収書やレシートは、大切な書類です。特に、個人事業主はプライベートな支出と事業用の支出が混在しがちなので、常に「どの支出が業務に関係しているか」を意識しておく必要があります。
「紙のままだと管理が大変」という方は、スマホで撮影してクラウドにアップロードし、デジタルデータとして保管しておく方法もおすすめです。税法上の条件を満たせば、電子帳簿保存法に従ってデジタル管理をすることも可能なので、これを機にペーパーレス化を進めてみるのも一案です。
4-3.必要書類をリストアップ
確定申告で必要となる主な書類は下記のとおりです。
- 売上帳や経費帳
- 領収書・レシート・請求書
- 源泉徴収票(他に給与収入がある場合など)
- 各種控除の証明書(社会保険料、医療費控除など)
- 青色申告決算書(青色申告の場合)
- 確定申告書B
特に、社会保険料や生命保険料などの控除証明書は年末に保険会社などから郵送されるケースが多いため、紛失しないように注意が必要です。事前にリストを作っておくと、抜け漏れがないかチェックしやすくなるのでおすすめです。
スムーズな確定申告のために知っておきたいコツ
ここまでが基本的な流れですが、実際に確定申告を行うにあたっては、いくつか押さえておきたいコツがあります。ここでは、特に初心者の方が戸惑いやすいポイントをピックアップしてみました。
- 収入と経費をわけて把握する
個人事業主の生活費と事業費は、できるだけ明確に区分することが重要です。自分で「これはプライベート、こっちは事業」と仕訳ができるよう、銀行口座やクレジットカードも分けると管理しやすくなります。 - 月ごとにまとめる習慣をつける
年に一度の確定申告とはいえ、日常的な経理作業を怠ると一気に大変になります。月の終わりに「その月の収入・支出をまとめる」時間を少しでも確保しておくと、後でまとめて作業するよりも格段にラクです。 - 会計ソフトを上手に活用する
近年はクラウド会計ソフトの進化が著しく、初心者でも操作しやすいインターフェースを持った製品が増えています。自動仕訳機能などを活用すれば、手作業の入力ミスを最小限に抑えられます。 - わからない時は専門家に相談する
税理士や行政書士などの専門家に相談すると、不安な点を解消するだけでなく、より効率的かつ正確な処理方法を教えてもらえます。費用はかかるものの、「結果的に節税やトラブル回避に役立った」という声も多いので、必要に応じて頼るのも賢い選択です。
まとめ
個人事業主にとって「確定申告」は、事業を正しく把握し税金をきちんと納めるための大切なステップです。毎日の取引や経費をきちんと記録し、控除制度なども上手に活用すれば、節税に加えて事業の改善にも役立てることが可能です。また、正確かつ丁寧な申告は信用力を高め、将来の資金調達や助成金申請の場面でも有利に働きます。
はじめての確定申告で戸惑いがある方も多いかもしれませんが、会計ソフトを使ったり、税理士に相談したりするなど、サポートを得られる手段はたくさんあります。計画的な準備と正しい知識を身につけることで、確定申告という「ハードル」が、むしろ事業を大きく前進させるチャンスになるともいえるでしょう。
ぜひ、今後は確定申告に対して前向きな姿勢を持ち、ビジネスの可能性を広げる一歩として活用してみてください。
- 事業の「健康診断」として、売上や経費を正確に把握する
- 節税や控除を最大限に活用して、余裕資金を生み出す
- 融資や助成金を受けるための信用力を高める
これらの観点を大事にしながら、毎年の確定申告を計画的にこなしていけば、個人事業主としての道がより明るく開けていくはずです。期限前に余裕を持って申告を行い、混雑や慌てを避けながら、スムーズに手続きを完了させましょう。
そして、もし「今年は申告の準備をしそこねた!」「何をどう計上すればいいのか、やっぱりわからない」という場合は、早めに税務署や専門家に相談するのがおすすめです。トラブルを回避しつつ、税金をきちんと納めて気持ちよく新年度を迎えられるよう、計画的に取り組んでいきましょう。